🍎梅が出回る季節になりましたね。
我が家では梅酒や梅ジュースを作るべく,瓶に梅と氷砂糖,ホワイトリカーなどを
詰めたところです。
さて,この梅酒ができる過程で,化学の教科書に載っているワードが出てきます。
今回は,梅酒の過程に沿って「浸透現象」および「浸透圧」「半透膜」について
書いていきます。
※実際に起こっている現象はもう少し複雑ですが、ここでは分かりやすいように
結果重視で書きますね。
🍏 文章が難しいようでしたら,図と,黄色のマーカーの文章だけ見てくださいね (^^ゞ
梅酒を作る過程で,何が起きているのか何となくお分かりいただけると思います。
梅酒を作り始めて最初に起こる変化は,「梅が水を吸って膨らむ」ことです。
瓶の中の水が梅の中へ移動しているわけですが,この現象が起きるために必要なのが,
「梅の皮が水を通すこと」と「梅の中に水を押し込む力」です。
順に確認していきましょう。
「梅の皮が水を通す」なら,梅の皮に穴が開いていることになりますが,
目で見て確認できるものではないでしょう(梅の細胞よりもはるかに小さい穴なので,
当たり前ですが……)。
とはいえ,水分子や水に溶けているイオンなどの小さい成分は通せる程度の穴です。
(このような,「溶液を構成する一部の成分は通すが,他の成分は通さない膜」を
「半透膜」と言います。)
続いて,「梅の中に水を押し込む力」を考えてみます。
梅を漬け始めたとき,梅の周りにある水とアルコールは「砂糖があまり溶けていない水」で,
「もともと梅の中にある水のほうが糖度が高い(糖がたくさん溶けている)」状態です
(下図)。
この2種類の水が,半透膜である皮を隔てて接しているとき,
「濃度の低い溶液の溶媒(ここでは水とアルコール)が,
高濃度溶液の方に拡散する」現象が起きます(浸透)。
すなわち “ 水とアルコールだけ ” が梅の皮を透過し,梅の中に
水とアルコールが取り込まれていくのです(右図)。
また,浸透の際に溶媒(ここでは水とアルコール)が半透膜を通って浸透しようとする圧力が「浸透圧」と呼ばれます。
梅を漬けてから時間が経ち,氷砂糖がよく溶けてくると,
梅の中の糖度よりも,梅の周りの水とアルコールのほうが
糖度が高い状態になります。
こうなると,先ほどとは逆に 梅の中の水やアルコールが
外に移動(拡散)していきます(右図)。
しかし,単純に逆の現象というわけではありません。
梅の中の水には,梅の成分が溶け込んでおり,それらも
水やアルコールと一緒に浸透(外に移動)するのです!
この2段階の浸透を経て、梅の旨味や香りが溶け込んだ
美味しい梅酒ができるのです(右図)。
ちなみに,水と氷砂糖ではなく,初めから濃い砂糖水で漬け込んだ場合は,浸透圧で梅の
水分は出てくるものの,浸透圧の変化が急すぎて溶けだせる成分が少なくなるとか……。
焦らずじっくり,がおいしさの秘訣ですね。出来上がるのが楽しみです (^^♪
💗浸透圧の例は,梅酒や梅ジュース以外にも色々あります。
・漬物(野菜に塩を振ると,野菜から水分が出てしんなりします)
・ジャム(梅酒と同じです)
・生の野菜を水にさらすと,しゃきっとする(野菜の中に水が入ります)
・汗をかくと,水分と一緒にミネラルも出ていくので,水だけでなく塩分も一緒に摂る
・消化された食物が腸で吸収される
・ナメクジに塩をかけると,小さくなって……
(ナメクジの体内から水分が出ていってしまいます)
などなど。身近な例を,ぜひ探してみてくださいね!
参考:高等学校『化学』 数研出版
Comments