蓮(ハス)が咲く季節となりました。蓮は清らかで,美しくて,とても好きな花です。
地下茎は蓮根(レンコン)としておなじみですね。
葉は生薬に,実や茎は食用に,花はお茶に,と,色々と使われるようです。
ラーメンなどの麺類を食べるときに使われる匙(スプーン)を
「散蓮華(ちりれんげ)」または単に「れんげ」といいますが,
それは,蓮の花(蓮華)から散った1枚の花びらに見立てて名づけられたとのこと。
また,春にピンクの花を咲かせる草花の「れんげ」は,その花姿が蓮の花を思わせる
ことからついた名のようです。 ➣ れんげの花の写真の記事
蓮はインドの国花です。
インドでは古代から,蓮の花は神聖なるものの象徴とされてきました。
クリシュナは「蓮の目を持つ者」と表現されています。
泥から生え気高く咲く花,まっすぐに大きく広がり水を弾く凛とした葉の姿が,
俗世の欲にまみれず清らかに生きることの象徴のようにとらえられ,
このイメージは仏教にも継承されました。 参考:ウィキペディア
🌳今回は,「インドの魔術師」と呼ばれる数学者,シュリニヴァーサ・ラマヌジャン(1887年~1920年)と,「タクシー数」についてご紹介します (^^♪
※ 2016年に公開された映画『奇蹟がくれた数式』(原題:The Man Who Knew Infinity)は
彼の伝記映画です。
数ある数学者の中で,すごく印象に残っている数学者の一人が,ラマヌジャンです。
異色の数学者,とでも言いましょうか,気になる存在なのです。
💛ラマヌジャン
南インドに生まれ,貧しいけれど正統派バラモンで,氏神はナーマギリ女神(ヴィシュヌ神
の化身の配偶者)。
彼は大学に入学しますが,数学以外への関心を失い,数学に没頭するあまり,
奨学金を止められて退学します。
その後は独学で数学の研究を進め,新しい公式を発見するたびにノートに書き留めて
いきます。
💛ハーディとの出会い
周囲の勧めもあって,彼は自身の研究成果を記した手紙を,イギリスの専門家に送ります。その中の一人が,ケンブリッジ大学の ハーディ です。
ここで面白いのは,手紙に書かれた公式たち。
彼が手紙に書き留めた たくさんの公式は,証明がなく,よく知られたものや 重要とは
思えないものも含まれ,半数以上を占める奇怪な公式は,この分野の権威であるハーディ
でも真偽を即断できないものでした。
しかし,ハーディが自身で証明したものの公表していない式がいくつか書かれていて,
不思議だったといいます。
彼が「天才」だと判断したハーディ。
手紙を送った他の専門家には ほとんど相手にされませんでしたが,ハーディは
彼の実力を認め,大学に招きました。
💛イギリスへ
イギリスに行くには,「海を渡ってはならない」というバラモンの戒律を破ることになる。
信心深い母親に反対されていましたが,ある夜,母親が夢を見て,
「外国に渡り大成しようとする息子の邪魔をしてはならぬ」とのナーマギリ女神の声を
聞いたといいます。
そしてようやく彼はイギリスに渡ります。
💛ハーディとの共同研究
彼は数学を独学で学んだことで,普通の数学者が知っている定理を知らなかったり,
「証明とは何か」という概念をほとんど持ち合わせていなかったりなど
無知なところがありましたが,同時に恐るべき直観力と洞察力があったといいます。
※ 数学は,「これはこのようなものだ」という約束・前提のもとで,論理的に導かれる
事実・正しいと証明されたものを積み重ねていきます。
公式だけがポンって書かれてあっても,それが正しいかどうか分からないと,
認められないし 使えないのです。そのため,新しい公式・定理には証明が必要なのです。
彼とハーディは絶妙のコンビで,毎朝彼が新しい定理を持ってくると,
ハーディはそれを検討し,証明をし,論文形式に完成させていました。
💛女神からのメッセージ
彼の思考プロセスについては,「自然に答えが浮かんだ」「夢の中でナーマギリ女神が
教えてくれた」などと言ったといいます。
ハーディはそれを信じませんでしたが,彼が発見するものは
「なぜそんな公式を思いついたのか見当もつかない」レベルのものなので,
私は本当にそうであったと思っています。
数学では たいていの場合,少し考えれば必然性も分かります。
ところが,彼の公式群に限ると,その大半において必然性が見えない。
ということは,彼がいなかったら,それらの公式は今でも発見されていないかもしれない
ということ。
何の脈略もなく公式が降ってわいてくる。(「魔術師」と言われるゆえんです。)
だから証明できないし,女神が教えてくれたことだから正しいはずで,証明の必要性も
感じない。
彼にとって,数学は神と自分をつなぐものだったのです。
日本の誇る独創的数学者・岡潔(おかきよし)さんも,毎朝1時間念仏を唱えてから
数学に向かったといいます。
数学の定理や公式は,シンプルで美しいものほど応用範囲が広くてよく使われる傾向が
あるのだそうです。神から届いた公式は,美しいに違いありません。
💛タクシー数
第一次世界大戦中も二人は研究を進めますが,
イギリスでの生活や風土が合わないことなどもあり,
彼は体を壊します。
療養中の彼をハーディが見舞ったときに,
「天気がひどいうえ,タクシーの番号も1729と
いう つまらないものだった」と言うのですが,
これに対して彼はすぐさま
「とても面白い数字ですよ。3乗の和として2通りに
書き表せる数のうち,最小のものです」
なるほど,確かに書けますね。
クンバコナムでの少年時代から,石板で計算して数に
慣れ親しんでいた 彼ならではの気づきですね。
このエピソードから,1729は
「ラマヌジャンのタクシー数」と呼ばれます。
※ 数学好きの人の中には,この1729を車のナンバーにする人もいます。
私の知人は,1024(2の10乗)を使っていましたね。
💛ラマヌジャンの功績
彼が発見した定理や公式は,今や素粒子論,宇宙論など 実に多方面に
影響を及ぼすようになっています。
ハーディは「私の数学上の最大の功績はラマヌジャンの発見だった」と語っています。
また,プリンストン大学理論物理学者のダイソンは
「ラマヌジャンを研究することが重要となってきた。彼の公式は美しいだけでなく,
事実と深さをも備えていることが分かってきたからだ」
と言っています。
彼は惜しくも若くして亡くなりましたが,彼の残した数多くの公式の解明は,
未だ完成していません。
ナーマギリ女神からの贈り物は,さらに輝きを放ってきています✨
参考文献:『天才の栄光と挫折』藤原正彦(2008)文春文庫
🌸いかがでしたか。
ラマヌジャンは,神様からの大きな使命を持って生まれてきたのだろうなと思います。
科学の世界では,偉大な研究や発見は,ときに,世界の何のつながりもないところで,
同時期に成されることがあります。
例えば,和算の大家・関孝和と,スイスのヤコブ・ベルヌーイの,数列の公式(関孝和の方が早い!),
グラハム・ベルとトーマス・エジソン,アントニオ・メウッチの,電話,
など,けっこうあるんですよ。
だから,人類にとって必要と思われるものは,しかるべき時に神様が降ろされるのかな,と
思っていました。それも,保険のために,何人かに。
知れば知るほど,私たちの力を超越した偉大な力を感じます。
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