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自然界に見られる素数 ~素数ゼミ~

  • 執筆者の写真: kibou7kateikyoushi
    kibou7kateikyoushi
  • 7 日前
  • 読了時間: 5分

更新日:3 日前



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よく通る道のそばに,ノウゼンカズラ(凌霄花)が咲いています。夏を感じさせる鮮やかなオレンジ色のかわいい花で,伸びたつるが風に揺れる様子が涼しげです。

春は黄色の花が多いなぁと思いましたが,夏は,このノウゼンカズラやユリ・ポーチュラカ・マリーゴールド・ケイトウ・キバナコスモスなど,オレンジ色の花をよく見かけます。夏の暑さにも負けず元気な花たちです!



アブラゼミ
アブラゼミ

さて,夏といえば,「セミ(蝉)」。

私は田舎育ちなので,セミの声を聞かないと,夏が来た気がしないんです (^^ゞ 

この頃はセミの声が一段と大きく元気になってきました。


ご存じの人もいらっしゃることと思いますが,昨年,アメリカで大量のセミが発生しました。

今回は,「素数ゼミ」と呼ばれるこのセミたちのお話をご紹介します (^^)/

        


素数については 素数の見つけ方 双子素数 でご紹介してきましたが,いよいよ,

自然界に見られる素数の登場です!


まずは言葉の確認から。

  素数:1よりも大きい自然数で,1と自分自身以外に約数をもたないもの。

                        (つまり,約数が2個だけである自然数)

     例えば,2,3,5,7,11,13,17,19 など。

     偶数は2だけで,それ以外は奇数。



🌻では,いよいよセミの話に移ります!

  

毎年発生するおなじみのセミではなく,周期的に発生するセミを 一般に「周期ゼミ」と

呼びます。

北アメリカには,ちょうど 13年ごとと 17年ごとに大量発生するセミがいて,13 と 17 が

素数であることから素数ゼミ」とも呼ばれます。体長は 2㎝~4㎝ ほどで,小さめです。

(周期ゼミには,化石から 12年~ 18年まで いろいろな周期で羽化する群れがいたことが

分かっていますが,13年周期と 17年周期以外の周期ゼミは絶滅してしまいました。)


これらのセミの特徴は,例えば「13年ゼミ」なら毎世代きっかり 13年かけて成虫になる

ことです。そして 13年に一度,いっぺんに成虫になるため大量発生するのです。

2024年に大量発生した「13年ゼミ」の群れは,次に 2037年に大量発生するという具合

です。

また これらのセミは それぞれ多くの群れがあることが知られています。

発生する年は地域ごとにずれているので,アメリカ中が一斉にセミだらけになることは

ありませんが,2024年は「13年ゼミ」と「17年ゼミ」が羽化する年だったので,

大変だったようですよ。騒音・セミが原因である交通事故・樹液を吸われて木が枯れる・

死骸の片付け などなど……。



この不思議な特徴を持つ周期発生の理由としては,次のようなものが挙げられます。


・大量発生することにより,セミの天敵である捕食者から食べつくされて全滅することを

 防ぐ希釈効果

  数が多ければ天敵に襲われても生き残る数が多い。

  また,例えば,捕食者や寄生虫が2年ごとに発生すると仮定すると,「12年ゼミ」

  ならば,12年ごと(2と 12 の最小公倍数が 12 であることから)に 天敵と同時発生

  する。つまり,羽化するたびに天敵と戦うことになる。

  「13年ゼミ」だとそれが 26年ごとになる。天敵と戦う機会が少ないほど,絶滅の危険も

  少なくなる。


群れで行動することにより,配偶者を見つけられるという効果

  もし複数の種のセミが同時に羽化したならば,違う種間での交雑が起きてしまう。

  交雑すればするほど生き延びるような気がするが,実際は,交雑の回数が多ければ多い

  ほど,周期が乱れ,先に絶滅してしまう。




🌺はい,ここで問題です! 周期が 15~18年の4種類の異なるセミが出会う周期を

  求めてみましょう (^^)/  (2つの数の最小公倍数を求めればよいですね)


①「15年ゼミ」と「16年ゼミ」


②「15年ゼミ」と「17年ゼミ」


③「15年ゼミ」と「18年ゼミ」

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④「16年ゼミ」と「17年ゼミ」


⑤「16年ゼミ」と「18年ゼミ」


⑥「17年ゼミ」と「18年ゼミ」



💚答え

① 240年

② 255年

③  90年

④ 272年

⑤ 144年

⑥ 306年


周期が素数である「17年ゼミ」が入ると最小公倍数が大きくなるので,

周期年数が違う群れと交雑しにくいことがわかります。

⑥ の数が大きいですが,③ ⑤ を見ると,「18年ゼミ」が残りやすいとは言えないですね。

このようにして,長い間に,最小公倍数の小さい周期のセミは減っていき,最小公倍数の

大きい「素数ゼミ」だけが生き残っていったのです。


ちなみに,「13年ゼミ」と「17年ゼミ」が次に出会うのは…… 同時発生した 2024年の

221年後,つまり 2245年ですね。



「素数ゼミ」の発生の年は大変なこともあるでしょうが,アメリカの大学教授などは,

次のように語っています。

・「素数ゼミは,米国の東半分にある落葉樹林の生態系のとても重要な部分を担っている」

・「このたぐいまれな自然現象に畏敬の念を持ってほしい」

・「こわがるのではなく,驚くべき貴重な自然の営みとして受け入れてほしい」

                       参考:九州大学附属図書館ウェブサイト,tenki.jp

                                                                                                             The Asahi Shimbun GLOBE+DIAMOND online


長い時間をかけて生き残る術(すべ)を身につけた「素数ゼミ」ですね。



クマゼミの羽化
クマゼミの羽化

🌻庭の木にセミの抜け殻を見つけると,「無事に出てきてくれてよかったなぁ」と

  思います。

  小さい頃は,よく幼虫を捕まえてきては,羽化するのを観察していました。

  羽化したてのセミの羽は白く透明で,やわやわ。時間をかけて羽を伸ばし,だんだんと

  固くなり,色づいていきます。セミも蝶も,羽化を見るたびに,不思議で神秘的で,

  感動します。

 地中で長い間 過ごし,地上での短い夏を力いっぱい生きるセミ。家の周りで鳴いている

  セミが,かわいらしく いとおしく感じられます (^^) 

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