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執筆者の写真kibou7kateikyoushi

彼岸花に寄せて ~花と本~




🌺『花さき山』(作:斎藤 隆介,絵:滝平 二郎,1969年 岩崎書店)という絵本を

ご存じですか?

小さい頃,好きでよく読んでもらっていました。


あやという女の子が,山菜をとりに行って道に迷い,山ンば に出会います。

そこには一面に咲く花が。

山ンば が言うには,

 「ふもとの村のにんげんが,やさしいことを ひとつすると ひとつさく


あやの足もとに咲いている赤い花。

それは,あやが妹のために,祭りの着物を辛抱したときに咲いたものでした。

 「やさしいことをすれば花が咲く。

     命をかけてすれば山が生まれる。


つらいのを辛抱して,自分のことより人のことを思って行動することの尊さ。

大人になって読み返すと,また違った味わいがあります。

絵本は,子供だけのものではないのですね。

切り絵の独特の雰囲気と美しい色彩の絵も,この本の魅力です。



💚その『花さき山』の花に似ている花が,彼岸花(ヒガンバナ;上の写真)です。

彼岸の頃になると,一斉に花を咲かせます。

まっすぐ伸びた茎の,凛とした雰囲気の花。花の後に葉が出てきます。

彼岸花の別名の一つが「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」で,仏教で天上の花という

意味です。                           参考:ウィキペディア

『花さき山』の花とつながりますね。


今の殺伐とした時代にあって,心まで枯らすことはしたくない。

どこかの山で,花を咲かせ続けたい。

花の溢れる世界を,みんなで作っていきたいですね🌸





🌺花についてのお話をもう一つ……


先日,中秋の名月に,お団子を作りました。

前回の記事を書いたときに,「今年はお団子を作りたいな~」と思っていたのです🍡

お団子を食べながら,東京での学生時代に よくお団子を食べていたのを

懐かしく思い出しました。

私の住んでいた所の近くには,小さいお団子屋さんが2軒ありました。

ときどきお団子を買っては,近くの公園に行っていました。

そこでは,富士山が見えるんです!


「智恵子は東京に空が無いといふ,

       ほんとの空が見たいといふ」

           (高村光太郎『智恵子抄』)


と描かれた東京の空ですが(田舎者の私には,智恵子

さんのお気持ちが少し分かる気がします),

東京から富士山が拝めることに感動しました。


嬉しくて,大好きな富士山を眺めながらお団子を食べていました。

「富士には月見草がよく似合う」(太宰治『富嶽百景』)という一文を思い出しながら。

  (この文はなぜか強烈な印象をもって頭に残っています。

    富士と月見草が,1枚の絵の中に描かれているようなイメージとして

    頭にあるからでしょうか。

    何かを覚えるときに,言葉だけでなく他のもの(何かのイメージ,物,事柄など)と

    結び付けて覚えておくと,忘れにくいですよ。)



💛ここで,なんと 太宰と,前回紹介した『竹取物語』がつながります (^^♪


  「かぐや姫は月から来て月に帰ります。かぐや姫喪失に悲しんだ帝は,

   もらった不死の薬を,富士の山頂(つまりもっとも天に近い場所)で焼きます。

   『竹取物語』は日本の物語の始めですから,太宰治はここで竹取を参照し,

   「富士には月見草」という名フレーズを埋め込んだのです。

   富士と月の関係をふまえて書いているのです。 

   さりげなく見えて,とても奥深い文章ですね。」



💛なお,太宰が「月見草(ツキミソウ)」と書いてあるのは,

実は待宵草(マツヨイグサ)のことではないか と聞いたことがあります。

(どちらも今の時期まで咲いています。)

これについて見ていきましょう!


『富嶽百景』からの引用です。

  「私の目には,いま,ちらとひとめ見た黄金色月見草の花ひとつ,

   花弁もあざやかに消えず残つた。三七七八米の富士の山と,立派に相対峙し,

   みぢんもゆるがず,なんと言ふのか,金剛力草とでも言ひたいくらゐ,

   けなげにすつくと立つてゐたあの月見草は,よかつた。

   富士には,月見草がよく似合ふ。」












   待宵草(マツヨイグサ)

   



              


                             ヒルザキツキミソウ                                         



月見草は夕方から翌朝まで咲き,花の色は白から淡いピンクへと変わります。


月見草は日本の風土に馴染まなくてあまり見かけなくなり,日本で育てられている

月見草は,ほとんどが昼に咲くヒルザキツキミソウだそうです。


同属種である待宵草夕方から翌朝まで咲き,花の色は黄色)の黄色い花色が

月を連想させたのか,待宵草などを「月見草」と誤って呼ぶ場合もあるとのことです。

                           参考:GARDEN STORY



こうして見てみると,「太宰の月見草」は,やはり待宵草のような気がしますね。




💛別件ですが,

竹久夢二(岡山県出身の画家・詩人・デザイナー)が作詞した

宵待草(ヨイマチグサ)」は,待宵草のことだとされています。


  「宵待草」

    待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬさうな

                              参考:ウィキペディア


確かに「マツヨイグサ」よりも「ヨイマチグサ」の方が,スムーズに歌えて

感じがいいですね。




💛我が家にも待宵草が生えているのですが,その黄色い花を見るたびに

「月見草」「富士山」などの言葉やイメージが浮かんきます。


  これは,本当は月見草ではないけれど,「太宰の月見草」だ……。




💚今の時期に咲く花々について,本と結び付けて書きました。

花と本の,また違った楽しみ方の一つ,ですかね (^^ゞ


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