山吹の花と実,そして和歌
- kibou7kateikyoushi
- 5月9日
- 読了時間: 3分


田舎道を車で走っていたら,山吹(ヤマブキ)の花がとても鮮やかに咲いていました!
この花の鮮やかな黄色が,「山吹色」という色名の由来
なんですよ。
バラ科の樹木ですが,枝は細くしなやかです。
花をたくさん付けて風に揺らぐ姿が美しく印象的です。
山吹は,万葉集に詠まれるほど古くから親しまれて
います。

花は一重咲きと八重咲きがあります。
一重咲きの花は5弁で,秋には実をつけます。
(「5」は フィボナッチ数 ですね!)
八重咲きは実をつけません。雌しべは花弁化して,雄しべは退化したためです。
日本で昔から栽培されてきた山吹の多くは八重咲きなので,「山吹は実をつけない」と
思われることも……。
🌿山吹の花が詠まれた歌で,おそらく最も広く知られている歌ではないでしょうか。
七重八重 花は咲けども山吹の みのひとつだに なきぞあやしき
兼明親王(かねあきらしんのう 醍醐天皇の皇子)
『後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)』より
平安時代,兼明親王が京都の小倉の家に住んでいたときのこと。
ある雨の日,蓑(みの)を借りたいとう人に,(蓑ではなく)山吹の枝を折って持たせ
ました。
後日,その人が,その意味が分からず訳をたずねてきたので,その返事にこの歌を詠んで
渡したということです。
山吹の花は七重八重と咲くのに,実が一つもならないのは不思議なことです。
(山吹ではありませんが,お貸しする蓑一つ無くて心苦しいことです。)
「みの」は,山吹の「実の」に,雨具の「蓑」が掛けられているんです。
八重咲きの山吹が実を結ばないことに,貸すべき蓑がないことを掛けています。
「あやしき」は,「道理や礼儀にはずれている」程の意。
江戸時代の流布本などでは「かなしき」になっています。 参考:兼明親王 千人万首
🌿太田道灌(おおたどうかん 室町時代の武将)の山吹伝説も有名です。(実話かどうかは分かりませんが……)

鷹狩に出かけた道灌は にわか雨に遭い,蓑を借りようと農家に立ち寄りました。
出てきた娘は,花の咲いた一枝の山吹を差し出します。道灌はその意図が理解できず,
立腹しながら帰りました。
その後,家臣にその話をしたところ,
兼明親王の歌 (上記)に掛けて,貧しく蓑一つ持ち合わせていないことを
奥ゆかしく答えたのだ
と教わります。道灌は無学の自分を恥じて,それ以後は歌道に励み,歌人としても名高く
なったとのことです。
道灌も立派ですが,娘も家臣も教養があって立派ですね。
時には人生を変えるきっかけになる花や人との出会いです🏵️
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