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執筆者の写真kibou7kateikyoushi

桜の花は散ってしまいましたが……徒然草から和算へ

更新日:5月9日


               花の散った桜と鶯(うぐいす)



美しく咲いていた桜も,散ってしまいました。寂しい気もしますが,

花の代わりに若葉が出てきて,清々しいさわやかな緑が広がります🌳

幼い頃は,散った花びらを松葉に刺して集めては遊んでいました。

のどかな風景とともに思い出されます。



🌸さて,今回は徒然草の一節を見てみましょう。有名な段ですよ(第137段)。

   『徒然草』は吉田兼好(卜部兼好,兼好法師)によって鎌倉時代に書かれたとされる随筆です。

   清少納言の『枕草子』,鴨長明の『方丈記』と並んで「日本三大随筆」と言われています。


(原文)

花は盛りに,月はくまなきをのみ見るものかは。

雨に向かひて月を恋ひ,たれこめて春のゆくへ知らぬも,なほあはれに情け深し。

咲きぬべきほどの梢,散りしをれたる庭などこそ,見どころ多けれ。

          ―― 中略 ―― 

花の散り,月の傾くを慕ふならひは,さることなれど,

          ―― 中略 ―― 

よろづのことも、初め終はりこそをかしけれ。


(現代語訳)

桜の花は満開の時にだけ,月はかげりのない満月の時にだけ,鑑賞するものだろうか、

そうではあるまい。

雨を見ながら見えない月を恋いしく思い,室内の簾(すだれ)の中に引きこもって

春が暮れてゆくのも知らないでいるというのも,やはり,しみじみと情趣が深い。

今にも花が咲こうとしている桜の梢や,花が散ってしおれている庭などこそ,

見るべき点が多い。

          ―― 中略 ―― 

花が散り,月が西に傾くのを,惜しんで慕う心の習いはもっともなことであるが,

          ―― 中略 ―― 

すべての物事も,始めと終わりにこそ興趣がある。

           (平安中期以降,「花」は桜の花,「月」は秋の月を指します。) ➣花といえば……

                          参考:『シグマ 古文の探求』 2002 文英堂

                        


🌳何事においても最盛の時だけでなく,人が評価しないようなものにも

  美を認めようとしています。

  人生を無常と見,その変化のうちに真の姿や美を見出そうとする考えですね。


  冬の桜には春の花や芽吹きの力が,春の桜には夏の気配が感じられます。

 桜だけでなく,自然界のものは見えないところで常に移り変わっています。

  美しい一瞬を切り取って見るのもいいですが,四季を通して,また, 

 長い年月を通して見る,目を閉じて美しい情景を自由に思い描く……。

  景色の見え方が変わってくるかもしれませんね。




🌸この「花は盛りに(第137段)」の後ろの方,教科書にも載らないところに,

  次のような文章があるんです(^^♪


(原文)

継子立(ままこだて)といふものを双六(すごろく)の石にて作りて,

立て並べたるほどは,

取られん事いづれの石とも知らねども,数へ当てて一つを取りぬれば,

その外は遁(のが)れぬと見れど,またまた数ふれば,

彼是(かれこれ)間抜(まぬ)き行くほどに,いづれも遁れざるに似たり。

                      (参考:山梨県立大学 伊藤洋 徒然草 第137段


(現代語訳)

継子立てというものを双六の石(碁石の白と黒)で作って立て並べたときは,

取られることがどの石とも分からないが,数え当てて一つを取ってしまうと,

その他(の石)は(取られるのを)逃れたと見るが,またまた数えると,

あれこれ間引いていくうちに,どれも逃れられないのに似ている。

  (何に似ているんでしょう? 気になる人は,徒然草を読んでみてくださいね。よく登場するテーマです。)



💛継子立(ままこだて)とは

  碁石でする遊びの一種。黒白の石それぞれ15個ずつ,合計30個を

  何らかの順序で円形に並べ,あらかじめ定められた場所にある石を起点として

 10番目にあたる石を取り除き,順次10番目の石を取っていって、

  最後に一つ残った石を勝ちとするもの。

 石の排列を工夫して,黒が勝つように,また白が勝つように,

  さらに特定の石が勝つようにすることができる。

 白・黒を,それぞれ先妻の子と後妻の子に見立てたところから継子という。継子算

                            出典:精選版 日本国語大辞典



💗継子立て(継子算)は,室町時代から江戸時代にかけて行われた数学遊戯。

  はい,和算です!

  次回で詳しく見ていきましょう~ (^^)/💕

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