🍎当塾の理科の講師「物理や」による記事です。
最近目にする機会があった放射性物質の「ウラン」
ですが,
一口に「ウラン」と言っても,
同じものを表しているとは限りません。
自然界に存在するウランは,ウラン235 と
ウラン238 の2種類です。
※この分子モデルはウランではありません
この2種類の主な違いは質量(重さ)ですが,
ウラン238 の方が比較的安定しており,ウラン235 は不安定です。
これら2種類のウランは自然界では混ざって存在しているので,
ウラン全体としては放射性物質という扱いとなっています。
また,2種類のウランの性質の違いから,ウランを原子力発電の燃料にする際には,
ウラン235 の密度を高める必要があります。
日本原燃「濃縮事業の概念」より
https://www.jnfl.co.jp/ja/business/about/uran/summary/
もともとウランは放射線を放つだけでなく発熱する物質ですが,原発の燃料に使われる
「低濃縮ウラン」では,発生する熱がより大きなものになります。
(福島第一原発の事故で聞いた「メルトダウン」は,この熱を制御する機構がうまく
働かなかったために,燃料が溶けてしまったことを指します)
さて,原発の燃料に使う低濃縮ウランを用意するにあたって,
当然「ウラン235 の濃度が低くなったウラン」が生まれます。
それが「劣化ウラン」です。
劣化ウランは原発の燃料には使えませんが,
ウランという物質の「密度(体積当たりの重さが)が大きい」という特徴に
注目されることがあります。
最近よく見る「劣化ウラン弾」がこれに該当します。
「劣化ウラン弾」という字面から「原爆」という連想をしてしまうかもしれませんが,
この2つは「全くの別物」です。
なぜなら,「原爆」に使われるウランは「ウラン235 の純度がほぼ100%」の,
超高濃度ウランとでも呼ぶべきものだからです。
とはいえ,劣化ウランにもわずかながらウラン235 が含まれているので,
放射性物質ではあります。
「劣化ウランだから安全」とは断言できないので,扱いには注意しなければなりませんね。
ちなみに,最近見かけた劣化ウランについてのコメントですが,
「弾薬庫の劣化ウラン弾が爆破された可能性も」
「西ウクライナの劣化ウラン弾薬集積所での爆発後,放射線量が急上昇」
といった,あり得ないとは言えないコメントや推測に紛れて
「劣化ウラン弾が核爆発」
というような,実はあり得ない妄想も流れてしまっているので,
情報の取捨選択は慎重にしなければなりませんね。
🌳ちょっとした参考程度に
GATEWAY PUNDIT ポール・セラン 2023年5月14日
放射性パニック:ロシア人のミサイルがフメリニツキーのウクライナの弾薬庫を直撃し,
大爆発を引き起こした
-英国の劣化ウランタンク砲弾の保管場所が破壊された
-地域の大気中のガンマ線急増
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